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藤倉明子さんのパリ通信 vol.12013.11.25

○ 今回から平成25年度 女子美パリ賞を受賞された
 藤倉明子さんにパリでの暮らしをご紹介していただきます。 みなさまお楽しみください!


 
パリ賞をいただいて、パリのCite Internationale des Artsにきてから、半年。
生活にも慣れてきました。フランスにきてまず衝撃を受けたのは色彩の豊富さ。日本と違う色彩や感覚にビックリしました。自然の色の目に染みるような鮮やかさ、色使いや空の高さ、雲のダイナミックさにカルチャーショックを受けています。このように見えているのもたぶん、日本から離れての生活という、違った制作場所での制作で、見かたも本来とは違っているからこその見え方でしょう。
 

私がスケッチしているところを通りがかりの人に撮ってもらいました。
ノルウェーのFromからさらに奥の、50人ほどしか村人が住んでいない
村でスケッチしてます。連絡船で途中下車し、ほぼヒッチハイク同然で
連絡船を捕まえる‥という大技を使いました。


ドイツの「黒い森」の記事を書いてますので、その森を撮影したものです。
BardenBardenというところからさらにバスで森に入った山の中です。


Alsace地方の Riquewihr村です。
手前の枝は全部ワインのためのぶどうです。ワイン畑として有名な村です。


パリ市内にあるLuximbourg公園です。
シテ施設からバスで、または徒歩でスケッチに行っております。


私のアトリエの制作風景です。

 

こちらに来る前に、自分の制作をもう一度見直すことと、なにかもう一つ欲しい‥という、自分なりの目標を、スケッチをしながら制作しながら、またその合間に沢山の数々の歴代の美術の先駆者たちの作品をみながらのこの制作に、自分に今後なんらか影響が出る気がしています。
制作にとても集中して向かえる環境にあるので、この環境は、私が長年希望していた制作スタイルなので、それが現在かなえられてとてもうれしいです。制作しながら、乾き待ち中には、美術館や、散歩に行き、スケッチをしたりしています。
日本画に集中して制作できるので、制作に詰まった時などは、市内を歩き回ってベンチやセーヌ河などの川辺に腰掛けながら模索したり、自分が好きな美術館の好きな作品の前で座りながら、その作品を見ながらタイムリーに熟考し、またすぐに自分の制作にうちこめる‥という、とても心をゆっくりさせながら頭を巡らせられるこの環境に大きな幸せを感じています。
今までとてもあくせくしながら制作していたので、制作するにしても何かを生み出すにしても、心に余裕を持たないと生まれないものもあるんだとこちらにきてから思います。
月に一度の割合で泊まりの遠出をしてスケッチをしています。今までフランス国内ではアルル・トールーズ・ノルマンディー・アルザス。フランス国外ではベルギー、ノルウェー、ドイツとスケッチしています。大陸続きですので、アクセスもフットワークもとても気軽で軽く、電車や飛行機(格安)で飛んで行けます。今まで描いていて憧れだった場所、どうしてもスケッチしたかった場所やら、とても気になっていた場所を選んでおこなっています。スケッチを主体としていますので、起きている間はほぼスケッチしているか走っているか移動しているか‥で、食事などは歩きながらサンドイッチをほおばったり、テイクアウトで買ったケイタリングをホテルで食べるなどが主です。また、小さな村にまで行けてスケッチできるので、本来のヨーロッパの生活や風景を垣間見ながら制作に打ち込めるので、とても自然な風景や生活形態をスケッチしたり見たり感じたりしていると思います。
自分が想像して描いていたものと、実際の場所がだいぶ違うこともあり、非常にビックリしたことも沢山あります。
私は「黒い森」を主題にして描いている作品もあるのですが、実際ドイツの「黒い森」に行ってみると、そこは平たくどこまでも続く黒い森ではなく、低い山々が永遠と続いているように思われるような黒い森でした。現地インフォメーションで自分が描きたいロケーションなどを現地で調べて(実際行ってみないと、細かい交通手段が違ったりあったりしますし、実際に住んでいる人に聞かないと取材が出来ないので非常に必要)バス終点の山の中まで分け入って山頂でスケッチしてきました。
「奥秩父のようだ‥」と山頂で思ったのですが、ただ、その森に踏み入れて、木々の間を覗いてみると、鋭い枝が、まるで魚の小骨のように長く鋭く間を埋めていて、人を入れるのを拒むようにそれぞれ伸びているのを実際にみて、知識では「ローマ人がこの地を踏み入れた時に昼間でも暗いということから黒い森と名付けた」ということは知っていましたが、暗いというよりも人を寄せ付けない、拒むという点で、「眠り姫」に出てくるような「茨の城」の茨に似ているようで、天然の有刺鉄線のようだなと思いました。それは、日本の森とは全く違っていました。
ますます制作にどのように生かそうか‥とワクワクしてきます。
日本と国外を行ききしながら、ということでは得られないことです。スケッチをためるだけでなく、そぐ部屋に戻り制作にとりかかれる‥そして、沢山の美術を遠慮なくゆっくり何度も観られることは、私のこの1年の期間は本当に貴重な機会をいただいていると思います。
これから真冬に突入していきます。
またどんな光景を見られるのか、制作できるのか、とても楽しみです。
 
藤倉 明子 
 
藤倉 明子(ふじくら あきこ)
1970年 埼玉県生まれ
自由学園女子最高学部卒業後、婦人之友社 編集部を経て、
1998年 女子美術大学芸術学部絵画科日本画専攻卒業
卒業制作展優秀作品賞受賞

1999年 第8回 佐藤美術館奨学生
2000年 女子美術大学大学院美術研究科(修士課程)美術専攻修了
平成25年度 女子美パリ賞受賞 現在パリにて研修中。

日本美術家連盟会員、創画会会友
主な受賞歴に、青垣2001年日本画展 読売新聞社賞(1999)
伊豆美術祭絵画展 優秀賞(2003)、
第7回女子美制作・研究奨励賞(2007)

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