○ 今回から平成26年度 第15回女子美パリ賞を受賞された、上岡ひとみさんにパリでの暮らしをご紹介していただきます。どうぞお楽しみください。
こんにちは。今年度パリ賞を頂き現在パリのCite Internationale des Artsに1年間滞在している和紙造形作家の上岡ひとみです。 これから4回に渡ってこちらでパリでの生活を報告していきます。
4月にパリに着いて6ヶ月が経ちました。その前まではドイツのベルリンで2年間アーティスト活動をしていてベルリンからパリへ引越しました。パリでの知り合いも増え、最近では連日夕方から知り合いの展覧会オープニングに足を運びそれ以外の時間は制作する毎日を送っています。パリに降り立ち初めての感想は都会で人が冷たいと言う事でした。数ヶ月はベルリンと比べてしまう癖があり、その度にアートや音楽やファッションの流行が違い如何にベルリンが田舎町だったかと言う事を思い知りました。私が感じた具体的な違いはフランス人は新しい物が苦手で伝統を重んじており、新しい物の介入をそっと遠くから見ている、と感じました。マレ地区のギャラリーへフランス人の友人を連れて展示交渉しましたが、私の作品は工芸とモダンアートの中間に見えるので、ギャラリーで扱うのが難しいとアドバイスを貰いました。
6月にOpen Studioに参加しました。初めてフランス人が和紙造形を見た感想はとにかく不思議と言う事でした。この不思議な素材をどうやって作っているのか、と言う疑問ばかりでした。私は和紙造形とベルリンで行った舞踏パフォーマンスの映像、和紙ランプを展示しました。2時間何度も同じ映像を観ている人やポートフォリオをじっくり見ていく人がいましたが、日本人アーティストの方達はコンセプトを固くした方が良いとのアドバイスもありました。パリの人にどうやったら私の和紙造形が魅力的になる魅せ方が出来るのかと考えるきっかけとなり、今現在試行錯誤中です。つい先日1日中部屋に篭り制作をしていたので気晴らしに近所を散歩していると以前グループ展で見て特に気に入ったアーティストのアトリエを偶然見つけ彼女に会う事ができました。彼女も私の作品に興味を示し、私達は是非コラボレーションしたいと話しました。来週私のスタジオで話合います。
ここ6ヶ月で分かった事です。フランス人には日本を好きな人が多く、アートやダンスを日本人よりよく見に出掛けます。働いたお金で名の知れぬ若手作家の作品をコレクションしている者や上流層の人が別荘や家を買ったらその内装にとてもお金を使い、そのために絵やオブジェを買う事が当たり前です。 私の研究課題はパリで私の和紙造形を知ってもらい、そのために私が求める和紙造形の魅力を追求する事です。これからどんな出遇いを作るのか、試行錯誤してみます。 |
上岡 ひとみ(うえおか ひとみ)
1983年生まれ 埼玉県出身
2007年 女子美術大学大学院美術研究科(修士課程)美術専攻修了
2011年 自動車会社退社
2012年 ベルリンで和紙造形作家として活動を再開する。
2014年 パリ賞受賞。現在パリにて滞在製作中。
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