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上岡ひとみさんのパリ通信 Vol.42015.03.25

 

こんにちは。今年度パリ賞を頂き現在パリのCite Internationale des Artsに1年間滞在している和紙造形作家の上岡ひとみです。全4回に渡ってこちらでパリでの生活を報告してきました。今回は最終回なのでちょっと長くなります。パリ生活1年間のアーティスト活動を通し、これまでの総括として綴ります。

 

 

ギャラリーDa-End のグループ展Vernissage

1月16日に初の個展を無事終わらせ、その影響でギャラリーでの展示が決まりました。

グループ展3日前の搬入日、ディレクター自らトラックをレンタルし数人のパリ中のアーティストのアトリエから立体作品を運び、最後に私の部屋まで2人の助手を連れてピックアップしに来て下さいました。そしてアトリエで初めて出来上がった作品を見て頂いた反応に不安が吹き飛びました。その後私もギャラリーへ向かい、前回の作品の搬出を手伝い、自身の作品も展示しました。搬出作業でディレクター自身のアトリエを見る事ができ、そこからバイクで2人乗りしギャラリーへ連れて行ってもらいました。晴れた日の夕方にバイクの速さで見るパリの景色や音は格別に綺麗で何事にも代え難い経験をさせて頂きました。その時に話した日本経済の事等一生忘れないでしょう。

そしてつい先日、2月27、28日にVernissage(オープニングパーティー)が終わりました。なぜ2日間あるのかと言うと、初日はギャラリーに関わるアーティストや顧客やディレクターの友人の方を呼ぶパーティーで60人程来ていました、イベントとしてフォトグラファーであるディレクター自ら顔を黒塗りにし、1組ずつ来客にマスクを着けて撮影していました。何故そんな事をしているのだろうと考えたのですが、そこにディレクターの底知れない暖かさを感じました。シャンパンを持つでも無く、来客を引き立たせるために目立たないよう暗いギャラリーの中で肌を黒塗し、黒いスーツを着て来客を撮影し楽しませていました。次の日は一般Vernissageで14時から20時まで本当に沢山のお客様がいらっしゃり、夕方にはぎゅうぎゅう詰めになりました。私のパリ生活でできた友達も何人も来てくれました。

そして興味深い事に、パリ賞の最後に今回展示している作品は私が和紙作品を初めて大学で作った12年前の作品のリニューアル作品だと言う事です。和紙を初めて面白いと感じ、和紙の白の力強さを引き出そうとして作った事を再確認しながら制作しました。今回ディレクターやギャラリストとの打ち合わせの際、世の中には無い抽象的な形状の方が面白いと言われたのがきっかけです。改めて制作してみると、この場でしか作れない全く別のものが出来上がりました。それは現在の自分が影響を受けている社会への不安や信ぴょう性、ヨーロッパと日本を行き来する生活が関係し作品が出来上がった様に思います。そして作品を成長させるために時々原点に戻る行為は制作の上でとても大切な事だと感じました。

 

 

アーティストとして生きるということ

私は本当に幸せ者です。アーティストを尊重してくれる素晴らしいギャラリストやディレクターが存在する事をパリで確認できました。展示期間2ヶ月間もパリの人に見てもらえる機会を与えて頂きました。今回、最近迷走していた自分の作品の方向性も見る事が出来ました。只、大きく動くとそれと同じく大きく良い事も大きく悪い事も起こります。

アーティストはアートを続ける為の努力を続ける能力が有るか無いかだと思います。

パリにはアルバイトを掛け持ちしながら自身の作品も作って展示をしている年齢が私と同じくらいのアーティストが沢山います。歴代パリ賞受賞者の数名もパリで未だに活躍されています。

結婚したり、母になったり、女性としての生活も色々とあります、アーティストである前に生物ですから。しかしどんな形になっても続ける努力をする事、そうしないと今まで作品を買ってくれたお客さんや認めてくれたディレクターや支えてくれた方達に申し訳無いと思います。パリに来て1年で帰りますと言うアーティストを誰が面倒みようと思うだろう?皆、アートと言う社会の希望に投資してくれているのです。そんな事を1年で学びました。

 

又、パリでは世界的に活躍されているアーティストの方によく出会いました。その方達に共通しているのは他人に媚びない独自の世界感を巧みに演出・パッケージングしていると言う事でした。そしてその独自の世界を創造する事に自信を持っているからこそ、そこにライバルなんかはおらず、他者アーティストとも上手くやっていけるのだと考えます。

 

 

今後の展示と教会パフォーマンスの事

今回の展示を見に来た日本人キュレーターの方が、未だ決定では無いのですが10月の展示にお誘いして頂きました。又、6月にはBerlin、9月と10月にパリでの展示が現在のところ予定しております。

又、前回お伝えした教会の中でのパフォーマンスですが、様々な手を使ってお願いしに行ったのですが、来年からのプログラムにしかもう入れてもらえない様です。こちらは心からやってみたいパフォーマンスなので粘り強く更に完璧な形で来年度に出来ればと思います。

このように沢山の心残りがあっては日本に帰国する事を断念しました。今後は元々居たBerlinを拠点にパリでの展示に参加しヨーロッパでのアーティスト活動をこのまま納得のいくまで続けたいと希望しています。

 

 

最後に・・・

私は賞を頂いた時、女子美から派遣されたアーティストとしてパリで何かを残したいと思って日々生活してきました。少しでも女子美OGとしてパリに爪痕を残すことが出来たでしょうか?

未だ未だ足りません、パリ生活1年を通して、自分の作品をどの様にして売り出していくかと言う事を学びました。2年間居たBerlinよりももっと必死にアーティストとしての生き残り合戦に参加していたと思います。これからどの場所に居ても、志高くもっともっと精進しようと思います。

パリ賞とは人ひとりの人生を変える力があると思います。パリの中心地で何不自由無くアーティスト活動に専念出来た1年間、女子美術大学理事長 大村 智様はじめ選考委員会先生方、関係者の方方へ心より感謝し御礼申し上げます。日々精進しますのでこれからも応援して頂ければ幸いです。

 

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Gallery Da-End “Cabinet DA-END 05” 28.February-25.April .2015

 

Title : ELLIPSE
D80W80 H300cm

 

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上岡 ひとみ(うえおか ひとみ)

 

1983年生まれ 埼玉県出身
2007年 女子美術大学大学院美術研究科(修士課程)美術専攻修了
2011年 自動車会社退社
2012年 ベルリンで和紙造形作家として活動を再開
2014年 パリ賞受賞
2015年 ベルリンを拠点にヨーロッパでアーティストとして活動中

  

  

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