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up date 2003.09.09

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【ロンドン通信 第2号】


□ 舟崎恵理(1992年専攻科宣伝計画修了)


舟崎恵理さんは卒業後東京でグラフィックデザイナーとして仕事をしたのち、ロンドンへ行きLondon College of Printingでbook arts を学びました。現在は製本家として仕事をしています。
また、2003年2月には英国でも国際的にも権威のある製本の協会・デザイナーブックバインダーズの準正会員Licenteate of Designer Bookbinders(U.K.)に選ばれました。現在はその仕事で超多忙のようです。舟崎さんもいろいろ皆様に書きたいことがあると楽しみにしています。


BOOKS FOR ALL (OR MAY BE FOR NOTHING!)第2回

古いお話

ナチュラル・ヒストリー博物館
サウスケンジントンにあるナチュラル・ヒストリー博物館。常設展だけでも見るのに1日かかる。
 
アンドレアさん
アンドレアさんは、図書館のwebサイトを開く準備で大忙しだ。10月には、www.nhm.ac.uk/art でアクセス可能。
  本
図書館は館内貸し出しのみ。一般の人でも申し込めば2年間通用するパスが発行される。
製本の仕事を始めるようになってから、古いものに携わることが多くなった。イギリス式の製本は他のヨーロッパの国々の繊細なスタイルと比べて、重く、がっしりとしており、「丈夫で長もち」が特徴だ。ところが長もちしても100年、200年も経つと、ガタがきてしまうもの。子供の頃お気に入りだった絵本がばらばらになってしまった経験がみなさんにも少なからずあると思う。歴史や古いものに愛着のあるイギリス人は、そのような本や、代々引き継いだ古い本を大事そうに製本スタジオに持ってくる。ここで古い本をきれいに豪華にピカピカにしてほしいというのはアメリカ人。イギリス人は古い本は古い趣そのままに残しつつ修復する方法を好む。リバックという本の修復テクニックは、本のカバーが背からはずれてしまった本を、『オリジナルの本の材料や構造をできるだけ変えずに修復する』という、古さにこだわるイギリス人にはもってこいの修復方法だ。新しい革を古めかしい色に染めるのはもちろん、私には残骸としか思えないようなオリジナルの背をその上に張り付けてしまうこともある。わざわざ趣をかもしだすために、角がすり減った中古の装飾道具を使うなど、「古さ、保存します職業」も意外に芸が細かいのだ。

初心者向き製本を教えている時、ロンドンのナチュラル・ヒストリー博物館の図書館で、博物館所有の本を管理する仕事をしているアンドレアさんと知り合い、館内の案内をしていただいた。館内には100万冊を超える本が、学別に5つの図書館に保管されている。専門分野が事細かに分かれているイギリスらしく、紙やページの修復は館内で行い、本の修復は館外の製本家に依頼するそうだ。それぞれの図書館には古い本たちが修復の予算がでる日を静かに待っている。もちろん、待っている間も本へのダメージを最小限に押さえるため、透明プラスティックのカバーをかけた後、紐で本を結び水平に保管したり、無酸性の箱に一時的に保管するなど、アンドレアさんたちの工夫がところどころにみられる。政府の補助金がでるようになったため、2年程前からロンドンの博物館と美術館の常設展は入場無料になった。入場料無料になったため、博物館に訪れる人が増えて、館内のカフェやギフトショップの売り上げが大幅に増えたという話を聞くが、家族連れや学生にはなんともうれしい話で、なるほど、おみやげに恐竜キャンディーを買ってしまいたくなってしまう。


もっと古いお話

友達の家に遊びに行くと先祖代々伝わるアンティークをうれしそうに説明してくれる。この状況に悲しくも慣れてしまうと、ビクトリア朝時代やジョージ朝時代のアンティークものでは前ほど驚かなくなってしまう。例えば、製本に使うパーチメント(羊皮紙)を探しにポートべローマーケットに行くと、20ポンドで古いパーチメントの契約書らしきもの(A1サイズ5枚分)が買える。1833年とちゃんと日付けも入っている。(ポートべローマーケットは、ホコリっぽいモノに魅せられてしまった人にはおすすめのストリートマーケットだ。)
さて、そろそろアンティークも見飽きてきたかなという時、「このお皿はきっと歴史が始まる以前のものね。」などと、にこやかに言われたとなると話は別だ。庭先に転がっている平らなものは、もしかして石器時代のもの?「子供達がままごと遊びをするのにもってこいなのよ。」
その微笑みは、イギリス人と古いものとの共存といった次元をもうとっくに超えたものだった。



もっとも古い話

ドーセットの海岸
ドーセットの海岸にて。化石探しに夢中になりすぎて、崖に近づきすぎないように。落ちてくるのは化石だけではないのだ。
石器が庭にあるなら化石も?というひそかな期待ももちろん裏切らない。イギリス南西部ドーセット地方に住む友人を訪ねた時、玄関先の鉢植えの間に何気なくあったのは、何を隠そう(隠さないが)アンモナイトの化石であった。直径30センチはある代物だ。イギリスの雨の多い気候にさらされてしっかりコケまで生えている。友人は「海岸を散歩していたら、見つけたの。」と湘南海岸で貝を拾ったかのように無邪気だ。アンモナイトの化石ってそんなに簡単見つかるものなの?と文献を調べてみたら、なるほど、ドーセット地方のライム・レジスという海岸の崖は化石発掘で有名である。発掘ガイドなるものには、リヤカーに山と積み上げられたアンモナイトのイラストの横に、『化石はみんなのもの。欲張ってたくさんとりすぎないように。』と注意書きまである。リヤカーに積むほどあるんだ、と変に納得してしまう。友人いわく、地球温暖化で海面が上昇して崖が崩れ、崖の新しい表面があらわになることが増えたので化石が見つかりやすくなったそうだ。近所の川の中洲からはマストドン(巨象)の骨なども発掘されるらしい。「あそこは骨だらけで手が突っ込めないくらい。」だそうだ。「最近、サクソン人の金のアームレットなんかも見つかってね。この辺りでは『またか』ってかんじだけどね。」と余裕すら感じられる。ある友人は、庭石やドアのストッパーにもアンモナイト化石を使っている。でこぼこしているので足のウラのマッサージにもおすすめだ。いつか私も化石を拾ったら製本に使う重しにしたい!とますます夢はふくらむばかりだ。

 
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