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up date 2004.05.06

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【ロンドン通信 第4号】


□ 舟崎恵理(1992年専攻科宣伝計画修了)


舟崎恵理さんは卒業後東京でグラフィックデザイナーとして仕事をしたのち、ロンドンへ行きLondon College of Printingでbook arts を学びました。現在は製本家として仕事をしています。
また、2003年2月には英国でも国際的にも権威のある製本の協会・デザイナーブックバインダーズの準正会員Licenteate of Designer Bookbinders(U.K.)に選ばれました。現在はその仕事で超多忙のようです。舟崎さんもいろいろ皆様に書きたいことがあると楽しみにしています。


BOOKS FOR ALL (OR MAY BE FOR NOTHING!) 最終回

印刷スタジオで昼食を。

ロンドン・プリント・スタジオにて
ロンドン・プリント・スタジオにて。等身大のモノプリントに励む人もいる。
最終回となったロンドン・レポートではロンドンの個性的なスタジオ事情を紹介したい。スタジオのスペースの問題で困っているアーティストが、作品を作りつづけるチャンスを比較的容易に見つけられることも、アーティストを職業としている人口が多いロンドンならではの話だ。ロンドン・カレッジ・オブ・プリンティング(LCP)を卒業後、スタジオはもちろん、印刷の設備も道具も揃っていないのに、大胆にも本を活版印刷と銅版画のイラストで作ろうと決心してしまった私は、その後6ヶ月の間、公共の印刷スタジオにお世話になることになった。西ロンドンにあるロンドン・プリント・スタジオは銅版画、シルク・スクリーン、リソグラフィー、凸版画の設備が整っていてアーティストの強い味方だ。大学卒業後も二年間は学生割り引き料金でスタジオを借りることができることもうれしい。ぽかぽか暖かい日は運河に面したスタジオのベランダでちょっとひと息、なんて優雅なこともできる。鴨に餌をやりながらマグカップでお茶を飲んでいると、つい今し方まで重いプレスを廻していたことなど忘れてしまう。ところがスタッフ達の話によると、水鳥たちの生活はこんなに平和そうに見えても、テリトリーの奪い合いで生死を争うものらしいのだ。(余談になるが水鳥に餌をあげる行為はほとんど伝統ともいってもいいくらいのイギリス式日曜日の典型的な午後の過ごし方だ。ひな鳥たちの数まで覚えているくらいの熱の入れ様で、「かわいかったわねえ」なんて微笑みながら家に帰ると、出かける前にオーブンに入れておいたローストチキンがこんがり焼き上がっているという具合だ。まさに鳥づくしの日曜日である。)



シャンペンはテーブルの下で飲みかわす。

ダニーのスタジオにて
ダニーのスタジオにて。ここの人々はワインを片手に作品を製作する。
"Life in a box"
"Life in a box"。ダニーとは次の共同製作、"Stepping out of the box" を計画中だ。
エキセントリックな詩人兼ブック・アーティストであるダニー・フリンに出会ったのもその頃のことだ。ダニーとはバービカンセンターで行われたロンドン・アーティストブックフェアーで知り会った。彼とのコラボレーションはこっそり会場に持ち込んだシャンペンのボトルをアーティストブックを展示しているスタンドの下に隠れて開けたことから始まる。(グラスは近くのパブから拝借した。)ダニーの製作した数々のアーティスト・ブックは勝手に伯父になりすまして出版した詩集など、冗談とも本気ともつかないウィットに富んだものだ。(そしてもちろん彼の伯父が詩人であったかは今だ真相が明らかではない。)そんな彼に、もうすぐ刷りあがりそうな銅版画のテキストを頼んだら快く引き受けてくれた。仕事帰りにウィンブルドンにあったダニーのスタジオの律義なアダナプレスでテキストを刷り上げ、出来上がったのが初のコラボレーション本、"LIFE IN A BOX" である。箱の中で起きる様々な出来事に悩まされる小人の生活を描いた本は、おまけの飴と共に拾ってきた木箱に収められている。



国際製本連合が介入するとき。

マーク
マークは風貌もユニークだ。
スタジオ・ファイブ
スタジオ・ファイブの「サンデー・メンバーズ」、キャサリンとヴィック。
スタジオ・ファイブもロンドンにある個性的なスタジオのひとつだ。ロンドン郊外は緑ゆたかなバーンズにあるスタジオは、ブックバインダー兼ブックアーティストであるマーク・コックラム氏によって1年前にオープンされた。マークのユニークな人柄と熱心な指導があっという間に評判になり、今では製本を志す人々で毎日のようににぎわっている。私が参加している日曜日のオープンスタジオは最高4人の生徒が本作りにいそしんでいる。日曜日の教会の鐘が鳴る平和なバーンズのスタジオで、本の背を金鎚でトントン丸めたり、真剣にナイフを研いでいる生徒がいたりする光景が繰り広げられているとは、誰も想像ができないだろう。生徒の国籍もアイルランド人、バルベドス人、韓国人、日本人と思いがけない組み合わせだ。ランチタイムにいきつけのパブのテーブルを囲みながら、マークは「これって国際製本連合ってかんじだな」となぜか得意気なのである。(これまた余談になるがスタジオに行った後にパブに直行する時は荷物に注意しなくてはならない。日常5種類以上の刃物を携帯していることをすっかり忘れがちな私は、荷物チェックの警備員に何度か恐れられたことがある。キッチンで働いているのか、と聞かれることが多いが、説明しても理解されたためしがない。今のところ最終的には「刺しちゃダメだよ」と笑いで終わっている。)



そして最後に、蚊のひげほど・・・

カード
コースの終わりに生徒達からいただいたカード。
ロンドンの製本スタジオで働くかたわら、1年ほど前から夜間コースで製本を教えている。コスモポリタンなロンドンの人々は外国人の話す英語に慣れているので、日本人が製本を教えていても戸惑うことがない。逆に生徒さん達から英語特有の表現を習ったりすることもある。"Gnat Whiskers off" などはこうして覚えたのだが、「なんだか日本人のあなたが言うととても楽しいわ!」などと面白がられたりもたびたびである。そして何よりも純粋に製本に熱心に取り組む人々から、私も技術やセンスなどよりもっと大切な忘れていたなにかを学んだような気持ちになるのだ。

 
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