女子美術大学同窓会ホームページ
art&commnuication
ライブラリ
エアメール
ニケ・プロジェクト
ヴィーナス達
同窓会の歴史
 
アート・インフォメーション
同窓生の展覧会
同窓生の出版物
同窓生の受賞
同窓生主催のギャラリー
リンク集
WEB同窓会新聞
本部からのお知らせ
支部情報
グループ情報
幹事会からのお知らせ
クラス会のお知らせ
同窓会とは
ビジョンと目的
組織図
業務と主な活動
住所・地図
コンタクト
登録内容変更届
情報提供
ご意見・ご感想
大学からのお知らせ
女子美卒業生サポート
女子美情報
 
TOP
エアメール
up date 2005.05.03

バックナンバー>>>

【ニューヨーク通信 第9号】


□ 流麻二果・ナガレマニカ(1997年芸術学部絵画科洋画専攻卒業)


まだまだNYは冬気候なものの、春のアートシーズンの始まる3月。
その扉を開けたのはやはりChristo and Jeanne Claudeの"The Gate"でした。
 

The Gate
The Gate
The Gate
ボランティアスタッフが幕を留めていたリボンを切ると一挙に幕が降ります(観客一同拍手)
Central Parkに7503本のサフラン色のゲートが並んだ初日、2月28日。まだ幕は鉄柱の上部に結び付けられていて、ボランティアのスタッフが一本一本その結びを解いていきます。ゴルフのように沢山の観客がゾロゾロと彼等に付いてまわり、いちいち「1、2、3、コングラッチュレーション!」と大騒ぎ。幕の落ち方も劇的で、この作品が単なるパブリックアートとしてだけではなくNY市の大きなイベントである事を実感させられた瞬間でした。Tシャツや画集、靴下など様々なオフィシャルグッズが公園内で販売されレジ前は長蛇の列、でも一番のお土産は初日と16日後の最終日に無料で配られた幕の小さなサンプルでしょう。私も一枚獲得しました。しかしこの売り上げもChristoは受け取りません。この作品にかかった全ての費用をドローイング等の彼等自身の収入で負担したのですから。彼等自身が一番この作品を楽しんでいるからという気持ちの良い理由に、アーティストとして敬服します。16日間という短い期間ではありましたが、雪がふった銀世界、夕焼けの茜色、真っ青な高い空、、色々な景色がGateと共にありました。夜遅くタクシーでセントラルパークを通り抜けた時、暗闇にgateが静かに立っていたのが私にとって一番美しく感じられた景色でした。

Christo and Jeanne-Claude: The Gates, Central Park, New York City, 1979-2005
>http://www.christojeanneclaude.net/tg.html


"The Gate"の盛り上がりに拍車をかけるように3/11日から14日までは世界有数のアートフェアー"The Armory Show"も開催されました。毎年ハドソンリバー沿いのピア90、92という巨大な会場に世界中のギャラリーが集まります。広さとブース数と人の多さで、一体全部を観てまわったのか分からなくなる程です。毎年何となく傾向があるのですが、今年も近年通り、コンサバ気味だったといえます。奇抜なインスタレーション等は影を潜め、飾りやすいサイズの絵画や写真が目立ちました。

The Armory Show
>http://www.thearmoryshow.com/


また"The Scope”というアートフェアーも同じ期間でした。こちらはミッドタウンのフラットオテルというホテルを舞台にNYの若手ギャラリーが中心となっています。ホテルの一部屋がブースとなるのでベッドやバスルームを工夫して展示に利用しているので、その様子も楽しめます。

The Scope
>http://www.scope-art.com/main.php


大きなイベントでもこれだけのものが集中して起っていたのですから、これらに合わせて展覧会、パフォーマンス、レクチャー、パーティ、、、想像も付かない数のイベントが行われていました。プレス関係者に配られていたスケジュールは何枚にも渡って分刻みで告知が載っていて、これだけ数があると観に行くものを選ぶ方も選ばれる方も大変です。

こうして春が明け、各美術館の展覧会もとても充実しています。
ホイットニー美術館はトムホーキンソン、サイトンブリーの豪華二本立て。グッゲンハイム美術感はダニエルビュラン。この会期中、毎第一土曜日にはDJが入って深夜までのパーティがあります。最初にこのパーティの話を聞いた時はセキュリティを心配しましたが、行って納得、今回のビュランのインスタレーションは中央の吹き抜け部分に鏡の壁を建てただけで、渦巻き型の回廊には何も展示されていないのです。これならば踊ろうが酔っぱらおうが作品の心配はいらない訳です。そしてメトロポリタン美術館はルーベンスのドローイング展。2年前に観たダヴィンチのドローイング展の時のような腰が抜ける程の衝撃はありませんでしたが、鉛筆一本でこれだけの表現が出来るのかと惚れ惚れしてしまいます。今とは全く異なる時間の流れの中でこその一筆の重なりなのでしょう。

Whitney Museum of American Art
>http://www.whitney.org/

Guggenheim museum
>http://www.guggenheim.org/new_york_index.shtml


これだけの豪華な顔ぶれの中で私が気になったのはMOMAのThomas Demand展。彼はヨーロッパでは有名な40代の若い作家です。
台所、階段の踊り場、緑茂る森、オフィスなどなど、誰も居ない空間の写真。ところがこれらは全て紙で原寸大!(しかも撮影後モデルは捨てられる)に作られ、撮影されたフィクションなのです。案内状にプリントされた小さい写真で観ると、ただの風景写真なのですが、会場にある大きな作品を実際に観ると何か違和感がある。それが紙の質感だからだと分かるにはしばらくの時間がかかります。妙に均一な紙の印象が、デザイン的なマットな美しさを持ちつつ、奇妙な雰囲気にも繋がっています。それにしても紙で作る労力!それにどの作品もテーマにしているのが政治的な事なので、(例えばアルカイダのザワヒリが隠れていた家の台所だったり)、新聞に載っているような報道写真が実は紙で出来たフィクションだという事で、じゃあノンフィクションって何だ?という問題提議もされています。

The Museum of Modern Art /Thomas Demand
>http://www.moma.org/exhibitions/2005/demand.html


週末の買物ついでにアートフェアーに行って、子供部屋の絵を買ったり、セントラルパークのThe Gateをくぐって散歩したり、NYの人達の生活には当たり前にアートがあります。しかしこれだけ展覧会の数が多いと、自作を創りながら色々とチェックしなければならずアーティストも大変です。実は私もそうなのですが、こちらのアーティスト仲間は展覧会を観るのがとても早い。それはこのような状況ゆえなのかもしれません。

 
credit