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ヴィーナス達
up date 2004.01.06

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知っていますか?現代美術と鑑賞者をつなぐ美術館学芸員のこの人を。


蔵屋美香さん  

蔵屋美香さん
 1988年絵画科洋画
(油絵専攻)卒業
さる2003年10月28日(火)〜12月21日(日)に開催された展覧会「旅――『ここではないどこか』を生きるための10のレッスン」は作品はもちろん、そのコンセプトの明快さと、会場構成、チラシ、入場券、図録などのデザインの面白さなどトータルで多くの若い人の感性を捉え、話題になりました。この展覧会の企画をした東京国立近代美術館の主任研究官「蔵屋美香」さんが今回このコーナーでご紹介するヴィーナスです。

女子美卒業後、蔵屋さんはデザインの仕事やアルバイトをしたのち、もともと本や考えることが好きだったこともあり、千葉大学大学院(教育学修士)に入学しました。ここで美術史、芸術学の勉強をし、学芸員としての基礎も学びました。大学院修了後、1993年より竹橋にある東京国立近代美術館に勤務しています。おもな企画展覧会には「美術館を読み解く――表慶館と現代の美術」(2001年、東京国立博物館)、「旅 ――『ここではないどこか』を生きるための10のレッスン」(2003年、東京国立近代美術館)などがあります。

蔵屋さんは展覧会の企画の他にも美術に関連したシンポジウム、講演会や執筆活動など幅広く活躍されています。



話題になった展覧会「旅 ――『ここではないどこか』を生きるための10のレッスン」の会場へいってお話を伺いました。この日は、女子美の洋画専攻学生への特別講演の日でした。後輩にご自分の企画展示の紹介をし、きっかけを与えながら多くを語らず展覧会へ誘う…物静かな口調に後輩たちへの気遣いを感じました。

 
 
大岩オスカール幸男
大岩オスカール幸男
《ガーデニング(マンハッタン)》
2002年 作家蔵



エリック・ファン・リースハウト
エリック・ファン・リースハウト
《ラリアム》
2001年 グローニンゲン美術館蔵



小野博 小野博
小野博
《When Tomorrow Comes #7》
2003年 作家蔵



展覧会のグラフィック
展覧会のグラフィック
 チラシ、パスポートガイド、入場券、図録、割引券


●作品の写真は「旅 ――『ここではないどこか』を生きるための10のレッスン」展覧会展示作品より。 
写真提供 東京国立近代美術館

●東京国立近代美術館のホームページはこちらです。
http://www.momat.go.jp/
  美術館学芸員という仕事

女子美で油絵を学んでいた蔵屋さんは、絵を描くことと同時に展覧会や図書館へ良く通っていました。以前から本が大好きだったので、女子美の図書館の隅っこに陣取って本を読むうちに、絵を描くこと自体よりも、作品を研究する方に興味が移っていきました。

学芸員の仕事は、研究の対象である本物の作品に直接ふれることが出来るのが一番の魅力です。また、自分が絵を描いていた経験があるゆえに直感的に分かることも多々あって、その意味で制作をしていたことは決して無駄にはなっていないと感じます。

企画した展覧会を見に来てくださった方々に、自分の訴えたかったことがどのように伝わったのかは、やはりもっとも気になるところです。会場で感想を耳にしたり、また最近ではインターネット上にさまざまな展覧会についての意見が書かれているのをみつけたりしますが、とてもうれしいですね。


美術館でいろいろ知ろう

今私は30代になりましたが、学生時代はちょうどバブルの時期でした。バブルには功罪あると思いますが、十分な資金をかけた展覧会も多く、海外からも良い作品がたくさんやってきて、私はずいぶん勉強させてもらいました。それに比べると現在は時期が悪く、展覧会の数や規模が限られてしまっています。でも、こんなときだからこそ、特に今多感な時期を過ごす若い人たちに、少しでも多くの良い作品、おもしろい展覧会を見てもらえるよう、がんばっています。

また、最近の美術館は作家によるギャラリートーク、講演会などを多く開催しています。すでにやりたい方向が決まっている人も、また、何か決めたいんだけど何をやっていいか分からない、という人も、実際に作品を作っている作家たちの話を聞いてみると、刺激になると思いますよ。作家たちは、それぞれどんなことに問題意識を持ち、それをどうやって具体的な作品に仕立てていくのか。いろいろ参考にするなかで、自分だけの表現を徐々に見つけて行ければいいのではないでしょうか。


学芸員はとても忙しく気の張る仕事ですが、リラックスタイムの過ごし方は?

やっぱり展覧会を見に行きます。仕事のためのリサーチではありませんが。
時間のある時は東北方面の温泉に行ってのんびりするのも好きです。自分を非日常の空間において解放すると、新しい視点が開けるような気がします。今回話題になった展覧会についても聞いてみました。
「旅 __『ここではないどこか』を生きるための10のレッスン」
今回の企画は、美術という枠を超えて、普段美術に関心のない人にも広く共感してもらえる、「旅」というテーマを設定しました。
写真、絵画、インスタレーションなど、10人の作家による旅をテーマにした作品約70点が展示されています。
最近、現代美術好きの若い人が増えつつあるようで、それはとてもうれしいのですが、ちょっとでも古い作品になるとたちまち興味を失ってしまうような、そんな興味の幅のせまさみたいなものを同時に感じていました。そのため、この展覧会では、その差をうめ、幅広く良い作品を見てもらいたい、知らせたいということが強くあり、作家も物故の方を含めて幅広い年齢層から選びました。

「旅」にでると、普段より自分の感覚が鋭くなっていることを誰もが感じますね。日常を離れ、見知らぬ場所、見知らぬ人々の中に身をおくと、さまざまなものが新鮮な姿で自分の感覚に突き刺さってきます。これは美術作品との出会いにとても似ています。今まで見たことのなかったものに出会って、感覚が研ぎ澄まされる。その中で、「今ここ」ではない、遠い「ここではないどこか」へと心を投げ出されてしまうような新鮮な経験をする。
今回は、実際に旅に出ることによって作られた多くの作品のほかに、自身はほとんど旅をすることのなかったジョセフ・コーネルの「無題 (旅人ホテル:アポリナリス)」 や、瀧口修造の「リバティ・パスポート」も展示しています。これも、たとえからだは「今ここ」を動かなくても、新しいものの見方、感じ方をもって世界に接するすべさえ学んでいれば、心は遠くへ旅をすることができる、ということを示そうと思ったからです。からだがひとつの場所にとどまることと、精神が空高く飛翔すること、この二つの間の緊張を扱った、ビル・ヴィオラの映像インスタレーション「十字架の聖ヨハネの部屋」も、やはり「動かない旅」のテーマに関わるものですね。


搭乗券のようなデザインの入場券で会場に入るとまず、パスポートガイドが手渡されました。ビザのようなスタンプも用意してありました。図録も旅に携帯するような小さな手帳サイズで作られ、展覧会全体が「旅」の形式で構成されていたのです。さて、次の蔵屋さん企画の展覧会はどのような世界へ私たちを連れていってくれるのか、楽しみになってきました。

 
 
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