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ヴィーナス達
up date 2004.06.08

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幅広い分野で活躍する女子美同窓生、今輝いている女子美魂のヴィーナスたちを紹介します。


5月17日から29日に同窓会主催で開催された「美の仕事―女たちのランウェイ」展。そこで紹介された8人のクリエイターたちの仕事の軌跡を追って、インタビューをしていきます。今回は松原澄子さんにご登場いただきます。


まつばらすみこ

松原澄子さん
1987年
芸術学部絵画科日本画専攻卒
ミキモト ジュエリーデザイナー

最初は就職するつもりはなかったという松原澄子さん。家族から「社会勉強のために就職しなさい」と言われたことから、たまたま求人の募集を出していたミキモトを見つけ、現在では(株)ミキモトのジュエリーデザイナーとして17年目を迎えた。「本当にやりたいことはジュエリーではないのでは?」と思うこともあったそうだが、今はそれなりに道筋が見え、このフィールドでやって行こうと思えるようになったと語る。「図らずも入れさせてもらって、いい人達やいい仕事に恵まれました。デザイン室という職場は一人一人自分の世界を持つことを許してくれるところでしたし、あまり競争させない、とてものんびりしていた社風でした。だからとてもゆっくりと勉強しながら、いろんなことを吸収しつつ成長できたと思います」

今では、顧客のオーダージュエリーコンサルティングデザインにも携わっている松原さんに現在に至るまでのお話を伺った。



※画像をクリックすると拡大したものがご覧いただけます。
Brooch
Brooch
第25回インターナショナル
パールデザインコンテスト 
課題部門
農林水産大臣賞/金賞
真珠の種子から芽生える植物
写真提供:(社)日本真珠振興会

neck
neck
ear
ear
2002年秋の新作コレクション
AUTUMN GRAND DISPLAY 2002 MIKIMOTO 8 DESIGNERS'
COLLECTION
松原 澄子コレクションより

2002年秋の新作コレクション
AUTUMN GRAND DISPLAY 2002
MIKIMOTO 8 DESIGNERS'
COLLECTION
松原 澄子コレクションより
入社後3ヶ月はジュエリーの勉強

入社当時ジュエリーに関しては素人でしたから、まずジュエリーの勉強を徹底的にさせられました。昔のデザイナーが描いたデザイン画を模写したり、カタログのジュエリーを描写したり。3ヶ月ぐらいそういう勉強をしたので、ゆっくりジュエリーというものを考えることができたんです。
その後、素材にデザインを加えた軽いタッチのブローチや、飛行機の中で売っている免税品のようなものなど、小さな品物のデザイン画から描かせていただくようになりました。
商品ができあがるまでは、企画が立ち上がってから一年位かかることもあります。基本的な流れとしてはラフデザインを何枚も描いた後、その中から企画担当者がいくつか選んで、試作を作ります。意外と手間のかかるものもありますから、そこからさらに厳選して商品化するものが選ばれていきます。
オーダージュエリーについては、お客さまの希望に合わせてデザインを描いていきます。デザインができるまでにはいろいろなケースがありますが、発注を頂けたら品物の製作はだいたい2ヶ月ぐらいです。


ジュエリーに関わる人々

顧客を担当している営業の方とのコミュニケーションや、実際私が描いたデザインを作ってくれるクラフトマンとのやりとりは大切ですね。目黒に関連会社であるミキモト装身具があって、そこでクラフトマンが仕事をしています。熟練したクラフトマンの方々の中には、時に自分の親くらいの年齢の方もいらっしゃいます。顧客の要望を理解してクラフトマンに伝え、よりよい仕上がりの為に共に検討を重ねます。素材を探して買い付ける専門の方、デザイン画にあわせて素材を並べる専門の方もいます。ジュエリーには、それぞれの分野のエキスパートと言われる方々がいて、それこそ真珠の養殖の段階からものすごく手間をかけます。真珠や宝石は人の手では作れないものですから、素材に対する畏敬の念をもち、大切に扱わなければなりません。素材にふさわしい格のある細工も必要です。使う素材や目的によっていろいろなことを考えねばなりませんし、それぞれについて作る姿勢も違ってきますね。最終的にお客さまの手に渡るまで、本当に多くの人の手がかかっているんです。


第25回インターナショナルパールデザインコンテスト金賞作品

これはほんの思いつきでできちゃったんです。野菜の豆苗を見たら、種がまん丸で、ぎゅんと茎が伸びていて、勢いがあって、面白い造形だと思ったんです。種を真珠にして描いたら皆さんにも好評でした。コンテストに出品するにも社内審査があります。ラフを出し合って、描いてきたデザイナー同士で作りたいものを話し合ったら、皆これが作りたいと言ってくれたんです(笑)作品ができあがってみたら、本当に真珠から芽生え出てきた植物のようでした。その頃、海洋の環境汚染や気象の変化によって、養殖しているあこや貝のへい死が問題となり、真珠業界は大打撃を受けていたんです。あちこちで暗いニュースが報じられ、日本の真珠の将来を憂える声も聞かれました。そんな中、真珠の美しい輝きの中から勢いよく伸びる芽は「またがんばって美しい日本の真珠を作って欲しい」という願いと、真珠を生み出す自然の力強さや、しなやかさを表現しているように思いました。「明るい希望や、力を感じてもらえればいい」そう思って応募したところ、素晴らしい賞をいただくことができました。


宝石にはそれにまつわるお客さまのストーリーがある

デザイン画は平面ですから、お客さまにプレゼンしたときの印象にくらべ、実際出来上がったときの印象が違うことも多いです。こちらもいいものを作りたいし、ずっとお客さまの手元に残ってしまうものですから、あまりにもイメージと違えば作り直します。ジュエリーをオーダーされるお客さまにはいろんな方がいらっしゃいますが、昔からの資産家の方や、もちろん男性の方もいらっしゃいます。ただ日本の場合、男性用のジュエリーの歴史は浅く、ヨーロッパほど品物が潤沢ではありません。女性は外に出して身に着ける方が多いですが、男性はもっとパーソナル感が強く、例えば、普段ずっと自分が身に着けているピルケースのような、個人的な使用目的の要望が多いです。
今はお客さま窓口にいるので、リングやネックレスだけではなく、帯留めや羽織紐、かんざしなどの受注もあります。かんざしは鼈甲など、また違う素材が入ってきて面白いですけど結構大変です(笑)お客さまの中には、真珠を集めてきて「これで作ってくれない?」とか、「おばぁちゃんの形見の指輪で何か作れませんか?」と言われることもあります。ジュエリーというものはすごくパーソナルなもので、その宝石にまつわるストーリーがあります。宝石としてあまり価値のないものでも、そこにお客さまの思い出や、思い入れが入ってくる。お客さまが欲しいものとぴったり合ったときや、きれいに仕上げてお渡しした際に喜んでもらえると本当に嬉しいですね。
4年前ぐらいからお客さまのご相談を受けて、コンサルティングをするようになりました。それまで営業の方がお客さまの要望を聞いて、直接私がお客さまとコミュニケーションする機会はあまりなかったんですが、会社の方針で、お客さまと直接話せるようなシステムに変わったんです。より深いサービスを提供しましょうということなのでしょうね(笑)私はお客さまの喜んでくださるものを提供したいので、ダイレクトに伝わってくるようになってとてもよかったと思います。
ネックレスや大きいものは時間も手間もかかりますが、首周りは完成したときの達成感が強いです。展示会でお客様を招待してディナーや、ショーを開催しますが、その際自分が手掛けたものを付けていただいていると嬉しいですね。私がデザインしたとは知らず、付けていらっしゃるお客さまもいますから、何かお話をする折に、「実はそのブローチ私がデザインしたんですよ」と言うと皆さん喜んでくださいますね。


ジュエリーデザイナーをめざす人へ<美の仕事展より>

ジュエリーは小さいものですが、実に多くの要素がもりこまれているものです。自然の力が生みだす貴重で美しい金属や鉱物を、全く異質なものである人体に結びつけ調和をとり、ひとつの造形物として表現するためには、コンマ何ミリのディテールについて考えることは避けられません。時には小さなリングが巨大な建造物のように思えることもあります。言わばジュエリーはディテールの集合体のようなものです。そんな微少なディテールに対峙できる神経が必要と思います。しかし、はじまりは何より『美しさ』に出会い、感じることです。表現手段が宝石であろうと絵具であろうと布や糸であっても、自分の中にある感じた『美しさ』を形にあらわすことのできる力を私たちは学んできたのだと思います。




「美の仕事」のクリエイターたちの仕事と活躍の軌跡
ダイジェストはこちらです>>>
 
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