今月から平成23 年度パリ賞受賞の松沢真紀さんにパリでの暮らしを紹介していただきます。
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初春パリに来てから、今はもう秋。あっという間に7ヶ月が過ぎました。時の速さ、そして貴重さをこれほど感じた日々は今までなかった様に思います。 10月20日から3日間、パリではFIAC(Foire Internationaled`art Contemporain) が開催されました。グランパレやルーブル美術館の中庭をメイン会場とし、シャンゼリゼ大通りにも数多くの仮設ブース。各国のギャラリーが参加します。 |
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それに先立ち、18日に近代美術館(Musés d’ art moderne de laville de Paris)で新しい企画展のべル二サージュが行われ、友人とともに見学に行きました。普段企画展のベルニサージュというと招待客のみの参加が原則なのですが、今回は特別。わたしたち一般にも幅広く開放し、多くの人々が来ていました。ニューヨークで活躍中のアーティストRyan Trecartin とLizzie Fitch のビデオ、立体作品の展示です。一言でいってハチャメチャ。強烈な色彩と光、言葉、音楽の洪水。作品の背後に流れるアメリカ現代社会の家庭、恋人、友人、職場といった人間関係の複雑さ、性と暴力問題の深刻さを感じずにはいられない展示でした。 そして、20日。いよいよFIAC本番です。わたしたちはグランパレを訪れ、ギャラリーの仮設ブース巡りを開始しました。今回、約160のギャラリーが参加し、最新アートを売り込もうと火花を散らしていました。この展示会は、全般的に抽象的でシンプルな絵画作品が多く、センスのよい作品が並び、とても落ち着いた雰囲気が会場に流れていました。これが今のアート界の流行なのでしょうか。さて一巡しそろそろ帰ろうかとしていたところ、予想外の人にばったり遭遇!何と、偶然にも村上隆氏がこの会場に来ていたのです。日本では会ったこともない人に遠く離れたパリで出会うとは。これもパリという都市の作り出すミラクルなのでしょうか。こんなハプニングを踏まえつつ、わたしは今この展示会と近代美術館の作品対比を興味深く振り返っています。エロチシズムや、バイオレンスを感じさせる作品がほとんど無いFIAC、ドメスティックな近代美術館の展示。どちらがよいか悪いかという事でなく、どちらも受け入れるフランス美術界の懐の深さを感じた2日間でした。 2011年10月21日 松沢真紀 |
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松沢真紀 神奈川県横浜市生 |