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クリスマスを終え、新年となりました。フランスに限らずヨーロッパの人々は、クリスマスを家族で過ごし、新年を恋人と過ごすというのが定番となっています。私のアトリエがあるシテ・インターナショナル・デ・ザール(国際芸術都市)の住民も、一時帰国する方が多いようで、レジデンス内は今ひっそりとしています。今回は、そんなシテにおけるアーティストたちの活動をご紹介したいと思います。
シテには、310人のアーティストが滞在できます。ここには、私のように平面絵画をする者のほかに、インスタレーション作家・ビデオニスト・ダンサーやミュージシャンにポエニスト、幅広い分野の表現者たちが生活しています。そしてアーティスト同士の交流会が多くあり、毎週コンサートやオープンスタジオが催されています。 |
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例えば、前回パリ賞でこちらに来ていた田口一枝さん。彼女は部屋で自分の研究テーマである「光」の効果を最大限に生かし、幻想的な空間を作りました。また、シダさんという黒人の版画家は、巨大なポートレイトを布にプリントし、デフォルメされた人物像を展示しました。似たりよったりの部屋の間取りが演出次第でこうも変わるのかと毎回感心します。 かくいう私も9月に一度、オープンスタジオを行いました。外国人に自分の絵を見せる初めての機会で緊張しましたが、友人らに展示を手伝ってもらい準備を整えての当日。チラシ配りとポスター掲示が効いたのか、たくさんの人々が私の部屋を訪ねてくれ、私の作品を見てくれました。「こんな強い絵を描く子だとは思わなかった、あなたをまだ学生だとおもっていた。」とか「震災をテーマにしているのか、日本は今どうなっているの」などといった声が多かったように思います。 |
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また、ワークショップとして「祈りの間」を設けました。日本の復興を世界の人々に祈って欲しいという思いから、私は、皆にここで日本のことを祈ってくれないかと頼みました。様々な国の人が、宗派や主張を超え、日本人のことを応援してくれている事を表現し日本に伝えたくて行ないました。自然に話は宗教観の違いや、その源についてのことになり、日本で宗教について習わず、考える機会の少なかった私は、ここで改めてその重要性と多義性に気付かされました。特に印象深かったのは、あるペルー人が「日本語に「気をつけてね」って言葉があるでしょう。気さえ持っていれが安全だってことじゃないの。それは神よりも、気を信じているってことでしょう。日本には特定の宗教がなくても信仰はあるのだよね。」という言葉です。このオープンスタジオで私は信仰と宗教、神と気の違い宗教観の違いなどを考えるきっかけを得ました。 そして今、シテの生活を利用し様々な国の人の祈りの形を写真で収集するというライフワークを行なっています。これが作品として成立するようになるのかはわかりません。しかしこのオープンスタジオがなかったら考えもしなかったことでしょう。シテでのオープンスタジオは、作家たちにとって新たな創造を生み出す場になっていると感じます。 |
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松沢真紀 神奈川県横浜市生 |