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パリ通信4回目

女子美のみなさま、こんにちは。パリは１月下旬そして３月と大雪が降りました。おととし２０１０年は、積雪１０センチで、２３年ぶりの大雪（！）と大騒ぎになっていたのですが、１月の雪はそれを上回る積雪だったようです。パリは北海道とほぼ緯度が同じなのですが、海流の関係で積もるような雪は意外に少ないのです。
ちょうどその頃、青森に住む女子美の先輩から”雪”をキーワードに依頼された短い原稿を書いている最中でして、どんどん積もっていく雪を目の前に、パソコンを打ちながら不思議な気分がしました。でも私の住む５区は学生街なので、珍しいパリの雪に、学生も観光客も興奮ぎみで、あっというまに白い絨毯は足跡、手跡だらけになるのでした。。。

今回は、昨年暮れまで展示させていただいていた、箱根のポーラ美術館でのインスタレーションについてです。こちらは展覧会というより、ポーラ美術館の理事長さんが、苺のインスタレーション作品を個人的に買ってくださって、その作品のお披露目といったかんじでの展示だったのですが、ポーラ美術館のロビーに、１０月上旬から１２月２５日まで展示していただきました。ポーラ美術館は、ピカソやセザンヌなど印象派のコレクションが中心で、（なんと年間２１万人の人が来るそうです。オドロキ。）、現代美術の展示は、はじめてだったそうです。
学芸員さんたちも、紙の苺が大量に美術館にきてしまって、さぞや困っているだろうな。。。（笑）と内心思っていたのですが、驚くほどに学芸員のみなさんはとても家族的かつ親切で、女子美に以前非常勤講師できていらした芸大卒の女性学芸員さんもいらして女子美の話になったり、とても和やかなムードでお迎えしていただけて、本当にとてもうれしかったです。ポーラ美術館はほぼ年中無休なので、年数回の閉館日を利用して、その時期にパリから帰国し、インスタレーションのセットアップをすることになりました。この時はモネのコレクションを中心にした企画展の展示替えでしたので、閉館とともに作業にはいり、夜の１２時近くまでかけて、苺のセットアップをしました。

この作品は、「あるひとつの祈りー鏡ー」というタイトルで、美術館内の構造の柱の根元に、展示しました。
岩手県立美術館での展示の際、沿岸部を訪れたのですが、がれきがのけられ草が腰の辺りまでのび廃墟になっている住宅街の中をひとり歩いた時、この廃墟になっている街の跡の中に、ただひとつ残っている鉄筋５、６階建ての旅館がありました。鉄筋の建物の１階と２階部分は、すっかりなくなって、向こう側の風景が見えていました。この時歩いた廃墟の住宅街を歩いていた時偶然割れた小さな子供用の鏡に出会い、この持ち主だった少女に思いを馳せながら制作しました。
またこのポーラ美術館での展示に、以前ワークショップをさせていただいた福島県の小学校の校長先生が、遠くから足を運んでくださったのですが、「この作品の意味がもっと知りたい。」とおっしゃってくださって、その後送ってくださった写真に愕然としました。それは校長先生がお住まいになっている地域で収穫することのできなかったたくさんの柿の写真でした。校長先生が柱の根元に積まれた苺のインスタレーションを、ご自身の見られた風景に重ねてくださったようで本当に心が痛みました。校長先生は今年の３月で定年されるご予定なのですが、今年、パリにご夫婦で退職旅行にいらしてくださるそうです。私もぜひ美術館の案内などをさせていただこう、と思っています。

野口香子