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up date 2003.03.02

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ライブラリでは、アートの様々な分野で第一線に立つ、ビッグな女子美の大先輩をご紹介いたします。

ライブラリ第5回
陳 進(国画家・膠彩画家)―前編 −前編
 
陳進 陳進さんは台湾女性として初めて日本へ留学して美術を学び、画家として生涯創作を続け、1997年には台湾の芸術家最高栄誉といわれる行政院文化奨を受賞しています。繊細な作品、豊かな経歴は台湾美術史上、現在も重要な位置を占めています。

1929(昭和4)年 日本画科高等師範科卒業

年譜はこちらです。





陳進さんは人物や風景、花鳥を主に描いていましたが、その絵は単に写実にもとづくだけではなく、陳進さんの経験、知識、独創的な美学によって描かれた理想的な世界だったようです。「芸術は生活の反映である。」という陳進さんのことばのように、描く対象は愛情をもって接している生活のなかから生まれていました。
昨年2003年8月に母国台湾の国立歴史博物館で開催された「悠閑静思――陳進仕女之美」と題した特別展は、陳進さんの人生とともに変わっていった表現の変遷に着目しました。そこでは陳進さんの人間としての魅力に出会うことが出来ます。その図録より黄光男館長の序文をご紹介します。

 

25才の頃の陳進
1997年陳進女史は行政院文化奬を受賞。寄付した賞金により国立歴史博物館 (台北)に「陳新芸術文化奬」が設置された。その感謝状を受ける陳進さん。
「芝蘭之香」 「芝蘭之香」
「芝蘭之香」 「芝蘭之香」
「芝蘭之香」1932
  絹布 膠彩
  第6回台湾美術展覧会(台展)
入選 無監査作品
試作品
「悠閑靜思――陳進仕女之美」展
  図録表紙より
陳進女史は台湾で初めて日本へ留学し、美術を学習した台湾籍の画家であり、その生涯を台湾の膠彩画の発展に尽力し、台湾の美術の為に斬新な東洋化伝統の確立を果たし、芸術史発展の新たなページを開きました。

1907年、陳進女史は新竹香山庄の代々読書人の名望ある家柄に生まれました。女史は毅然とした独立精神と男性にも劣らない勇気で、当時台湾が封鎖的で保守的な環境にあったにも係わらず、一人家を離れ現代化教育を受け、生涯絵画の領域で弛まず努力しました。

女史は人物・風景・花卉を得意としましたが、中でも人物画は特に傑出しており、その殆どは女性を対象としていました。陳進女史自身、良家の出身であることに加え、温厚な人柄により、女性の優雅で富貴な雰囲気を存分に表現し、「閨秀気質」(名家の令嬢気質)の風格を擁していると称賛されました。年が増すにつれて視野も広がり、更に結婚生活や出産などを経て、作品のテーマやテクニックにも変化が見られ、女史の芸術生活は円満な生命の追求に尽き、後の人々が人生の意義を追求する際の手本となっています。

陳進女史は「芸術は生命の熱量であり、心にあるがままのことを書いており、生活は必然的に真実である」と話しておられます。女史は目の前にある生活から作品の材料を採り、真の生命を反映しています。それが早期の作品〈合奏〉・〈化粧〉から中期の〈洞房〉・〈嬰児〉、後期の〈新娘〉・〈母愛〉に至る迄に表れており、女史が名家の令嬢として生まれ、慈母に至る転換と生活そのものを描いた感があります。女史の豊富な経歴は、さながら女性の高度な発展の一生を写し取っているようです。このため、この度の展覧会はこの点を主軸とし、陳進女史が1932年〜1995年に描いた婦女の作品32点を精選し、年代順に詳しい解説を試みると同時に、女史の結婚前と結婚後の生活態度と画風が大きく変化していることに着目し、1946年の結婚を分岐点とし、それらの作品を「時代閨秀(時代の令嬢)」(1925〜1945)と「伝統慈母(伝統の慈母)」(1946〜1998)の二大単元に分け、処遇した時代と悠々閑閑とした心境を披露し、女史が社会と生活上の観察をどのように美に転換して画布上に記録したかを説明し、女史の「芸術は生活の反応であり、美感を具す生命力である!」の絵画思想を解明していきます。

本館は1996年「陳進九十回顧展」を開催したことがありますが、1997年、陳進女史は行政院文化奬に於いて受賞。その賞金を本館にご寄付下さいました。そこで我々は本館に「陳新芸術文化奬」を設け、台湾の膠彩画の人材育成を奨励しております。1998年陳進女史は逝去されましたが、今再び「悠閑静思――陳進仕女之美」と題して特別展を開催し、終生台湾の芸術界に尽力と貢献をされてこられた故人を忍び、感謝の意を表したいと思います。

国立歴史博物館 (台北)館長 黄光男 

「悠閑静思――陳進仕女之美」展図録より 2003年
 
「古楽」 「古楽」
「古楽」 「古楽」
「古楽」1982
  絹布 膠彩
  台北市立美術館 蔵
「古楽」
二胡を奏じる作品は1929年に「黄昏の庭院」と題して描かれているが、本作品はそれと趣を異にしている。「黄昏の庭院」に於ける女性は髷を結い、伝統的な衣装を見に纏い、花が咲き乱れる花園のなかでニ胡を奏じている。そして50年もの歳月を経て、再度描かれた二胡演奏の作品は、二胡が発する物悲しくも台湾情緒溢れる美しい調べを奏でる女性の美感を描写している。本作品は<香蘭>と共に、かつて「文化教育建設委員会」主催の「中華民国現代十大美術家展」に出展したことがあり、日本の木下美術館で展示されている。この2点の作品の女性は、作者陳進が当時思い描いていた台湾の名家の娘を代表している。
二胡を掻き鳴らしている女性は、大きなウェーブのロングヘアを肩まで垂らし、梅紫色の花模様のチャイナドレスを身に付け、茶色のハイヒールを履き、きちんと椅子に座ってひたすら二胡を奏じている。音楽の旋律にのって身体が少し前かがみになっている。向う側に推された弦が平行している上半身と二胡を破っている。すわっているS型の姿は画面に律動感をもたらしている。二胡が置かれている腹部の位置は演奏に従って、その息づかいが整えられてきている。胸部と腹部は起伏の変化に沿って動く様子が描かれている。演奏している姿態は胡琴の形や構造、琴面の蛇皮の質感を正確に掌握し描写されており、音楽を好む陳進とその造詣の深さをここに見ることができる。
(作品解説 黄 士純/「悠閑靜思――陳進仕女之美」展図録より)


【主な収蔵先】

国立歴史博物館(台北)
台北市立美術館(台湾)
高雄市立美術館(台湾)
高雄市立歴史博物館(台湾)
順益台湾原住民博物館(台湾)
東之画廊(台北)
福岡アジア美術館
蕭 成家(個人蔵)


【参考文献】

「中国巨匠美術週刊」1996年
「悠閑靜思――陳進仕女之美」展図録 国立歴史博物館 (台北)2003年


【協力】

蕭 成家 
羅 成純
黄 士純
林 キイン
国立歴史博物館 (台湾)
女子美術大学歴史資料整備委員会

 
 
credit