女子美術大学同窓会ホームページ
art&commnuication
ライブラリ
エアメール
ニケ・プロジェクト
ヴィーナス達
同窓会の歴史
 
アート・インフォメーション
同窓生の展覧会
同窓生の出版物
同窓生の受賞
同窓生主催のギャラリー
リンク集
WEB同窓会新聞
本部からのお知らせ
支部情報
グループ情報
幹事会からのお知らせ
クラス会のお知らせ
同窓会とは
ビジョンと目的
組織図
業務と主な活動
住所・地図
コンタクト
登録内容変更届
情報提供
ご意見・ご感想
大学からのお知らせ
女子美卒業生サポート
女子美情報
 
TOP
エアメール
up date 2003.06.03

バックナンバー>>>

【ロンドン通信 第1号】


□ 舟崎恵理(1992年専攻科宣伝計画修了)


舟崎恵理さんは卒業後東京でグラフィックデザイナーとして仕事をしたのち、ロンドンへ行きLondon College of Printingでbook arts を学びました。現在は製本家として仕事をしています。
また、この2月には英国でも国際的にも権威のある製本の協会・デザイナーブックバインダーズの準正会員Licenteate of Designer Bookbinders(U.K.)に選ばれました。現在はその仕事で超多忙のようです。舟崎さんもいろいろ皆様に書きたいことがあると楽しみにしていらっしゃいます。今回はイギリスで働く舟崎さんの貴重な経験談です。


BOOKS FOR ALL (OR MAY BE FOR NOTHING!)

Dear all


Dear all
これ着てみてはみたものの帽子のつくりが日本人の頭の形に合わないのです。誰かに「茄子の上に四角いものがのっかてるみたいだな」と言われましたっけ。
Park Life - イギリスのバンド、BLURのヒット曲のタイトルを経験したくて英語もままならぬままロンドンにやってきたのが6年前。”公園で鳩にえさをやってなんだかいいことをした気分”を味わいたくて、到着したその日にチップスを買って公園のベンチで食べましたっけ。そばにいた鳩にチップスを分け与えたとたん、公園を埋め尽くすかとも思われるような鳩の集団に囲まれてしまい、これからの生活大丈夫かなあとぼんやり考えたのを思い出します。大丈夫だったのか、なかったのか、最近はロンドン伝統の”一日の中に四季がある天気”がいとおしく思えるようになりました。そして今だにチップスは私の大好物です。


ロックンロールタイム!


ロックンロールタイム!
背景にはやぎの革が
ロンドンの芸術大学には専門コースが沢山あり、生徒の年齢層もとても幅広い。飯田橋にあるブリティシュカウンシルでは、イギリスの芸術大学のリストが閲覧可能で、コースネームだけでも興味が湧いてくる。
「BA (Hons) BOOK ARTS AND CRAFTS」。私がLCP(ロンドン・カレッジ・オブ・プリンティング)で学んだコースは、製本の技術を学びながら、銅版画やシルクスクリーン、活字印刷などで印刷したものを本という形に発展させていくというユニークなコースでした。講師達も様々。活版印刷担当のジェリーは、詩人でもあり、頼むとうれしそうに新作を声も高らかに披露してくれる。製本の革すきのデモンストレーションをしながら「このビールっ腹が、革を押さえるのに役立つんだな。」とは、伝統製本を教えるテリ−。シルクスクリーン担当のトニ−は、さあ印刷という段階になると「ロックンロールタイム!」とはしゃいでは、忙しくスクイーザーを動かす生徒達をみて満足そうに目を細めるのであった。


本をつくる人々。


今、働いているロンドンの製本会社の社長がブックアートの展覧会をみて「なんだか変な本をつくっている学生がいる。デザイナーとしてためしに雇ってみよう」と血迷ったのは、もう3年以上も前のことだ。英語もおぼつかない日本人を雇ってしまうとは勇敢なイギリス人である。
基本的に仕事内容は手製本。きっとビクトリア朝の時代から変わっていないであろう手製本がビジネスとして成り立つのも不思議だ。イギリス人でも「製本家?そんな職業まだこの世に存在してるの?」と驚く人もいる。朝8時から4時半までしっかり本をつくる。ひとつひとつ縫い合わせた本の背を丸くし、ボードを切り、革をすき、カバーをし、金箔押しをする。
ロンドンブリッジはテートモダン美術館の目と鼻の先で時間が止まってしまったような製本スタジオで働いているのは、16才の頃から見習いをして本をつくってきた人たちだ。筋金入りの職人である。センチメートルより、やはりインチの方が好きな人々である。朝8時きっかりになると、さっそうとエプロンを掛け、重しをしておいた前日の本のできばえを静かにチェックする姿など、時々かっこよくみえてしまうくらいだけど、実はサッカーのファンで大衆紙、DAILY EXPRESS のサッカーねたを読むのが毎日の楽しみだったりする、典型的なおじさんたちでもある。

ジョン ジョンは仕上がった本を金箔などでデコレーションする担当だ。私がデザインをすると「こんなデザインみたこともない」と頭をかかえてしまうのである。   ピーター トレーニングマネージャーのピーターは「3年程前から白髪が増えたなあ」と上目づかいに私のことを見るのである。


そして今日も本をつくる。

作品
この作品を見た子供が大喜びで箱を開け、中のチョコレートバーを食べてしまった後、チョコの賞味期限が2年前に切れていたことに気付きました!
とにかく子供のころから本が好きだった。読むのが好きというよりは、ページに印刷された文字のかたちやインクのにじみがうれしい。買ったばかりの本を開いてみては、印刷や紙のフレッシュなにおいに魅せられていた。今でもかばんの中やベッドのそばに一冊はないと落ち着かないありさまだ。本というオブジェ自体が好きだと困ることもある。例えばページを開いて読みはじめる...すると今度は次に何がおこるんだろう?と、続きが気になって仕方がなくなってくる。つまり本を読むスピードが興味についていけないというか、しまいにはパラパラ終わりのほうのページをめくってみるが、結末を知ってしまうと全く面白くなくなってしまうので、いけない、いけない、と本を閉じたり開いたりするうちに、ページの束の持つ触感にはまってしまい、今度はその閉じたり開いたりという動作だけに時間が費やされてしまうのである。というわけで、どうせなら本を自分で書いて印刷して製本して、しまいには箱なんかに入れてしまおうと始めたのがブックアートなのである。本の中身は「ページをめくるごとにだんだん埋まってしまう釘人間」といったようなたぐいの、とるに足らないジョークである。週末を一般公開の印刷スタジオで過ごしたり、地元ウィンブルドンの友達と共同製作をしたりしてはいるものの、そればかりに集中できないのが現状である。でもたくさんの人々が応援してくれるので、製本スタジオで働くかたわら、今後、もっとおかしなブックアートを製造していきたいと思っている。

 
credit